May 22nd 2020

追跡型広告制限(LAT: Limit Ad Tracking)について知っておくべきこと

昨今、General Data Protection Regulation (GDPR:EU一般データ保護規則) 、California Consumer Privacy Act (CCPA:カリフォルニア州消費者プライバシー法) 、Children’s Online Privacy Protection Act (COPPA:児童オンラインプライバシー保護法) など、個人データに関するポリシーや規制に関するニュースが多く見られます。そこで今回、プロダクトマーケティング担当ディレクターであるTony Ouk氏、およびデマンド製品担当プロダクトマネージャーのRina Matsumoto氏が、もう1つのデータイニシアティブとして考えられるLimit Ad Tracking(LAT:追跡型広告制限) について語りました。

Tony:Rinaさん、よろしくお願いします。個人データに関するさまざまな規制について、非常に多くのニュースで話題になっているようですね。Limit Ad Tracking(LAT)と、その重要性について教えてください。

Rina:もちろんです。LAT は、ユーザーが広告主のID (IDFA) をオプトアウトできるiOSデバイスの機能です。iOS 10までは、ユーザーがLATを選択した場合でも、表示回数の制限、アトリビューション、コンバージョン、固有ユーザー数の推定、広告詐欺の検出、デバッグなどのさまざまな理由で利用できていました。しかし、iOS 10が2016年後半にリリースされたとき、LATがオンになっているとIDFAをいかなる目的にも使用することができなくなりました。Androidは広告パーソナライゼーションをオプトアウトしてもGoogle Advertising IDは利用できるのですが、これとは異なりiOSでは実際LATを有効にすると、ユーザーのIDFAはゼロで表示されます。

ですので、LATを理解することはますます重要になってきており、プライバシーが広告における重要な部分を占めるようになってきています。加えて、LATは市場シェアを伸ばしていることにも着目すべきです。Singular社のレポートによりますと、LATは過去4年間で倍増しましたが、この傾向が続くとすべての関係者がその傾向に適応する必要が出てきます。

Tony:LATが有効になっているユーザーとそうでないユーザーの特徴に違いはありますか?

Rina:Vungleのネットワークを横断的に分析したのですが、かなり興味深い結果が得られました。一般的に、LATが有効のユーザーはリテンションと収益を含むすべてのLTV(顧客生涯価値)の 指標において、より高い品質を示すことがわかりました。最近のコホートデータでも、iOS の場合、LATユーザーのD7 ROAS(広告費に対するリターン)が平均にして31%高いこともわかりました。しかしこれは予想通りで、LATを有効にする行為を意図的に行っているユーザーは、おそらく洗練されており、精通していると思われます。

Tony:AppleがIDFAを完全に削除するかもしれないという噂があります。なぜ彼らはこの変更を検討するのでしょうか?

Rina:Appleは2016年のiOS 10へのアップデートでIDFAを廃止し、2018年にはSKAdnetwork(IDFAのないアトリビューションソリューション)を導入することを示唆してきました。私の考えでは、これはパーソナルデータ利用に関する規制強化を含む、Appleのプライバシーに関するより大きなトレンドの一部です。今日、人々は自分の個人データがどのように使われているかについてより敏感になり、より強い透明性を求めています。個人データが誤って使用されたり、悪用されたりする恐れがあるからです。Appleが消費者をより良い方法で保護する方法を強く検討していることは容易に想像でき、これはそのための新たな方法になる可能性があります。

Tony:これは誰にとっても良い取り組みのように聞こえますね?

Rina:はい、ユーザーの個人データの利用方法をコントロールし、透明性を高めることに反対する人はいません。Vungleでは、GDPR、CCPA、COPPAのいずれのイニシアティブであっても、常にこれらのイニシアティブをサポートしてきました。結局のところ、ユーザーはデスクトップであろうとモバイルデバイスであろうと、オンラインで過ごす時間がますます増えています。クレジットカード情報や友人に送信するテキストメッセージなど、オンラインまたはアプリ内での個人的な機密情報の送信に対し、ユーザーが安心して、安全に操作できることが重要になります。

もし変化の兆しが見えてきたら、関わるすべての関係者に影響が出てくる以上、全員が準備をすることで、モバイルマーケティングのエコシステムに利益をもたらすことができます。

Tony:懸念があるとしたらどんなことですか?

Rina:IDFAが利用されている理由はいくつかあるのですが、IDFAの削除でモバイルマーケティングに影響がでてきそうです。

まず先に頭に浮かぶのはアトリビューション。現在、デバイスマッチングがアトリビューションの主要な方法になっており、代替方法はフィンガープリント手法になります。フィンガープリントは、デバイスのIPアドレスとデバイスユーザーエージェントを利用するアトリビューションの確率的な方法です。コンポネントが確率的であるため不正確な要素があり、アトリビューションのあるインストールで誤検知と検知漏れの両方が発生する場合があります。

これはまた、これから述べる次の要素にも関係します。それは、コンバージョンレートの潜在的な変化です。IDFAはネットワークが表示回数の制限(ユーザーごとに表示される広告)によって広告を効率的に表示したり、すでにアプリをインストールしたユーザーにその広告が表示されなくしたり、最終的にエンドユーザーに関連する広告を表示するための重要な手段でもあります。

Tony:Rinaさんは2つの潜在的な問題について触れました。一つはオーディエンスを知ること。もう一つは彼らにリーチすること。どういう意味ですか?

Rina:すべてCPMの低下につながる可能性があります。つまり、パブリッシャーと広告主の間の取り引きの価値や金額が下がるということです。これはパブリッシャーにとっては収益面で不利になり、広告主にとっては購入できると感じている在庫の質の面で不利になります。レストランに食べに行くという例えで説明してみましょう。IDFAを利用することで、広告主はユーザーをよりよく理解できるようになるとお話しました。ユーザーが関心のあるコンテンツを表示し、ユーザー体験を全体的に向上させることができます。たとえば、レストランに行ったときに、店員がメニューを見せてくれなかったり、食べたいものを聞いてくれなかったとします。そのレストランができる最善のことは、料理を出して、あなたが楽しんでくれることを願うのみです。

もしあなたがベジタリアンで、レストランが出した料理がステーキだったとします。さらに、レストランはあなたがそこで食事をしたいのか、テイクアウトなのかさえ判断できなかったとします。そしてあなたは家に帰ってはじめて、お肉料理を目の前にしたベジタリアン、ということになります。

Tony:これは広告詐欺をやり辛くさせるとも聞きましたが、どういう意味でしょうか?

Rina:IDFAがなくなると、数え切れないほどの影響が出てきます。たとえば、不正検出は現在、デバイスIDの追跡に大きく依存していますが、ターゲットにデバイスIDのリストを活用できない限り、リターゲットは不可能になります。

つまり、ここでお伝えしたいのは、あらゆるポリシー変更についての各側面をしっかり考慮し、そのポリシーが影響するすべての人々に周知する明確なプランとタイムラインを適切に策定すべきだということです。

Tony:このような潜在的な変化に対し、モバイル広告業界にいる者としてどのように備えが必要ですか?

Rina:Vungleのような広告在庫を取り扱うアドネットワークの場合、デバイスIDが利用できなくてもエンドユーザーに効率的に広告を表示する新しい方法を考える必要があります。Vungleの場合、特にGDPRとCCPAが適用されて以来、コンテキストターゲティングに既に投資しているという利点があります。さらに、VungleのようなSDKダイレクトのネットワークは、ファーストパーティデータを得るためにパブリッシャーと密な協力体制があります。これは、広告主が求めるオーディエンスにリーチするのに有効な多くのツールを提供するためですが、これにより広告キャンペーンを効果的に実施することができます。

広告主に対しては、今のシステムがいかにIDFAに依存しているかを考え、しっかり追跡してほしいと思っています。多くの広告主は、キャンペーンの効果測定をするのにIDFAなどのデバイスIDを使用しています。ファーストパーティのユーザーIDを可能な限り利用することは、準備として着実なステップと言えます。

アトリビューションは、大局的に解決すべき重要なパズルと言えます。正確なアトリビューションができなければ、マーケターは彼らの取り組みを適切に分析し、適切なチャネルに投資することができなくなります。ネットワークとパブリッシャーの場合は、彼らがけん引しているトラフィックの信用や収益が得られなくなります。フィンガープリントに関しては、市場の最大手のMMPから多くのソートリーダーシップが輩出されています。両者の間にはいくつかの違いはありますが、ひとつはっきりしているのは、フィンガープリンティングは代替の方法であり、主要なアトリビューション方法ではないということです。これを今後の主要な方法にする場合は、追加投資が必要になります。

Tony:大変役に立つ情報をありがとうございます。最後に、みなさんに何かお伝えしたいことはありますか?

Rina:LATがいつ、Appleのデフォルトになるのか。あるいは本当に近い将来実現するのかすら、まだはっきりしていません。しかし、そうなった時のために、Vungleのようなパートナーや、こういったブログサイトのコミュニケーションを通じてもっと詳しく知ることができます。私はこのトピックについてオープンに議論し、IDFAのない世界を超えてモバイル広告分野がどのように持続していくかを理解したいと思っています。

Tony Ouk

Tony Ouk

Director of Product Marketing

Japan Blog