Jun 6th 2020
iOS 14とSKAdNetworkのご紹介:広告主の皆様への影響について
2020年6月、Apple社はiOS 14について最新アップデートを発表しました。このアップグレードにより様々な機能拡充が行われますが、モバイルアドテック業界にも変化をもたらします。最も注目されるのは、広告識別子(Identifier for Advertisers, IDFA)がデフォルトでオフになることです。これにより、全てのアプリはユーザーをトラッキングしたり、デバイスのIDFAにアクセスする前に、ユーザーからはっきりとした同意を得る必要があります。もう一つApple社が示した重要な点は、今後Apple社がフィンガープリンティングを正式に許可しなくなった場合、彼らの提供するSKAdNetworkが最も有効なアトリビューション手段になるという点です。つまり、Apple社が同社の基準に則り、消費者のプライバシーを保護するため、アトリビューションプロセスをOSレベルで実施できるようにしたということです。これにより、Apple社はモバイルマーケターが従来のデータから読み取れていた大半の情報を削除することになります。
このブログではまず第一弾として、iOSが広告主に与える影響について取り上げ、今後iOS14による変更がパブリッシャー、アドネットワーク、そしてアドテクノロジー全体のエコシステムに与える影響について連載を行います。
広告主はiOSに対してどのように備えるべきか?
Apple社の方針はいまだ不明確な点があり、広告主(またエコシステム全ての人々)は非常に課題が多いと感じています。一方で、iOS14がもたらす未来に対して、広告主が備えられる点もいくつかあります。キーとなる変更は次の通り:
- IDFA利用には、ユーザーの同意が必須
広告主は、現在データパイプラインにおいてIDFAをどのように利用しているか全て調査し、必要に応じて対応を講じなくてはなりません。ユーザーのプライバシー保護のため、自社アプリケーション以外のアプリケーションのIDに結びつかないように、アプリケーション固有のIDを使用することを検討してください。また、広告主はAppTrackingTransparencyフレームワークを実装し、ユーザーの同意を得てIDFAを最大限活用するできるよう対策する必要があります。 - 決定的要素を含んだアトリビューションは衰退の可能性、フィンガープリントIDの行く末も不透明
Apple社は、フォンガープリントIDの禁止がどのようなものかということについても明確にしていません。IDFAが利用出来なくなる可能性、またフィンガープリントの今後についての不確実性を考慮する必要があります。広告主はMMPのアプローチ、またAppleの始めたプライバシーに対する新たな取り組みが実行されることを理解し、同時にMMPのアトリビューションが今後Appleに受け入れられなくなる事態に備えることが大切です。広告主はSKAdNetworkの統合を検討するべきです。
SKAdNetworkをアトリビューションとして使用する場合、広告主が知っておくべき事項
広告主がSKAdNetwork上でキャンペーンをインテグレートして実行する場合、広告運用、データ分析、入札戦略について適応するため多くの変更があるでしょう。
技術的な観点では、広告主は、SKAdNetworkのフレームワークを自社アプリにインテグレートする必要があります。これには次の2種類のコールが含まれます。
- 必須:registerAppForAdNetworkAttributionメソッド。アプリをインストールした際に通知を生成する短い1行のコード。
- 任意:updateConversionValueメソッド。ユーザー品質の推定値(0~63)を算出することが可能。※iOS14でのみ利用
この任意のCall of Conversion Valueを実装するには特に注意して設定する必要があります。ユーザー品質に関して、広告主・ネットワークがキャンペーンデータに紐づけられる唯一のプロキシであり、コンバージョン値が更新されるたびにトリガーされる24時間タイマーにより、インストールのポストバックがどの程度遅れるかを決定します。
さらに、広告主はネットワークパートナーと協力し、データに使用できる情報の詳細さを理解しなければなりません。SKAdNetworkインストールのポストバックではパラメータが制限されているため、インストールがいつ行われたのか、またはインストールがどの広告インスタンスから行われたのかを知るのが困難になります。唯一応用が効くパラメーターは、campaign-id及びconversion-valueパラメーターです。どちらにも独自の制限がありますが、最適なセットアップを実現するには、双方で協力することが大切です。
それに加え、広告主のデータの使用や分析方法は、現在のやり方から大きく異なることになります。
SKAdNetworkの現状の設定では、アトリビューションデータはネットワークのみに送信されます。広告主、MMP、その他の第三者のサーバーにデータは送信されません。そのため、広告主はイベントレベルで必要なデータにアクセスできるように、ネットワークパートナーと協力する必要があります。それだけでなく、IDFAまたは内部ユーザーIDが担っていたアプリ内のデータと既存のMMPデータを結びつける共通の識別子が存在しなくなります。広告主にとっては、実際の広告費用対効果 (ROAS) 及び異なるデータから得られた増加を測定することが課題となり、UAチームにとっては、マーケティング投資の効果をモニターするため統計モデリングを取り入れる必要が出てきます。
次回のブログでは、これらの変更がパブリッシャーにどのような影響を与えるかについて考察します。