Feb 10th 2021
Vungleによる2021年のモバイルマーケティング予測
2021年はモバイルマーケティング、そしてはモバイル業界にとって変革の年になるでしょう。
注目すべきは、迫りくるApple iOS 14への変更です。AppleはIDFA(iOS端末の広告主識別子)をオプトアウトからオプトインへ近々変更します。またモバイル広告業界の取引メカニズの標準がウォーターフォール型からアプリ入札へと移行しつつあります。
その結果、モバイルマーケターのマーケティングやマネタイズ担当者の戦略は定まらない状態が続いています。
そこで業界をリードするVungleの専門家5人が、2021年の業界のランドスケープの変化について予測しました。
「プロバブリスティックアトリビューション」がよく使われる言葉に
春先には、「プロバブリスティックアトリビューション」が(少なくともモバイルマーケターにとっては)一般的に使用される言葉になっていることでしょう。Appleが2020年に宣言したユーザープライバシーが施行されると、アトリビューションの常識はエンジニアリング手法(特定型)からデータサイエンス手法(推定型)へと移行します。モバイルマーケターがこの10年間使ってきたツールや測定基準を使い続けることはもはや賢明でなく、アトリビューションへの新しいアプローチを採用し、適応すべきです。
インストールアトリビューションは、モバイルマーケティングエコシステム全体の基盤となります。Appleが今年の春にユーザーIDFAを廃止すると、このデータに依存している一連のツールやダッシュボード全体が壊れたり、少なくとも重要な機能や価値を失う恐れがあります。よって、現状を維持するためには代わりの対策が必要です。プロバブリスティックアトリビューション分析は、ユーザーがどこからアプリをインストールしたかをアルゴリズム的に推測する、長期的で実行可能な唯一の解決策になります。
COVID-19が、あらゆる形態や規模の企業における既存のeコマースと在宅勤務のポリシーのトレンドを加速させたように、IDFAの廃止は、データサイエンスと機械学習がモバイルマーケティングエコシステムにおいて必要不可欠なスキルとツールになる傾向をさらに加速させるでしょう。これはすでに起きていたのですが、Appleは単にそのトレンドを加速させました。
洗練されたモバイルマーケターとコンテキストプラットフォームがAppleの新しいプライバシーパラダイム下で市場シェアを得ることに
2021年のモバイルマーケティング情勢において、2つの重要なテーマが大きな話題になると思います。ひとつは、私の同僚でもあるソフィア・チャンがこのコラムで説明している、パブリッシャーにとってのアプリ入札の急増、そして広告主にとっての広範囲で影響が出てくるプライバシーに関する変化です。
道を切り開く者が市場シェアを獲得します。iOS 14のプライバシーに関する変更をAppleが「早春」までに遅らせたといっても、この重大な出来事に備える(とくに未解決なことが多い中で)にあたって十分な時間があるとは言えません。この変化に対応するために構築すべき、導入すべき、処理すべき膨大な量のテスト、新しいテクノロジーおよびインフラストラクチャーがあるのです。
マクロレベルの考察:ユーザー獲得チームの限られた時間に最適な収益をもたらすアドネットワークに絞られ、マーケティング予算は統合されるでしょう。差別化されたデータと広告制作能力に投資してきたSDKベースのアドネットワークとDSPは、コンテキストターゲティングが2021年に重要視されるにつれその恩恵を受けることになります。ネットワークがM&Aを通じて次第に規模を拡大し、データと広告制作の幅を強化し続けるようになります。
ディベロッパーレベルの考察:まだ多くの不確定要素がある中、準備段階でアクションを起こしているモバイルマーケターは、ユーザー獲得の取り組みにおいて生じる混乱を最小限にとどめ、より優位なスタートを切ることができるでしょう。SKAdNetworkの仕組みを理解する以外に、準備には以下のことが含まれます。
- 既に大量のiOS広告枠を占めているLATトラフィックに対して効果的に購入する方法を学ぶ。
- アドネットワークを使用したエンドツーエンドのSKAdNetworkテストを実行する。
- Androidはもちろんのこと、WindowsやAmazonなどの新しいアプリプラットフォームに向けても、時間と労力をかける優先順位を再度見直す。これらプラットフォームの広告枠は今後さらに注目したいところです。
eコマースなど他のジャンルが苦戦し、広告予算を削減しなければいけなくなる反面、ゲーム業界の熟練したマーケターはさらに市場シェアを獲得することになりそうです
ユーザー獲得の自動化が普及する
これからはユーザー獲得(UA)の自動化が進む年になると思います。今のモバイルマーケティングは比較的初期セグメントであり、2021年はUAの自動化が広く普及する年になると私は予測しています。
UAの自動化は、LTV予測、入札と予算管理、広告クリエイティブの分析と自動化、そして、キャンペーンの自動作成といった、複数の要素で構成されています。予測LTVと自動入札、予算を管理することは、今となっては解決されているものの、Appleのプライバシーに関する変化が適用されるようになると、決定的なアトリビューションが特定できない環境で、SKAdNetworkを使ってキャンペーンの有効性を測定するデータサイエンスのプログラムが必要になります。幸い、VungleのAlgoLiftをはじめ、すでにこの問題に対する取り組みが進められています。アドネットワークがプライバシーを意識しこの新しい環境に対応しようと躍起になる中、Appleが近々実施するプライバシーの変更によって、進行中キャンペーンの管理方法が変わる可能性が多いにあります。管理APIが作成され、新しいベストプラクティスを順守する必要がでてきそうです。
UA自動化におけるイノベーションの最先端には、よりスマートな広告クリエイティブの分析とクリエイティブの自動テストが欠かせません。これは主にアドネットワークのレポーティングサポートに依存しますが、広告クリエイティブはパフォーマンスマーケティング管理者が競争上の優位性を利用するための主要なひとつの手段です。(詳しくは、弊社Si Crowhurstの以下の記事を参照ください)
最後に、インクリメンタリティが課題となり、多くの企業が2021年の間に解決しようとするでしょう。チャネル間の競合は、デターミニスティック(特定型)アトリビューションの世界では大きな問題として取り上げられることはありませんでしたが、SKAdNetworkでは、チャネルが数値をあげているのか、別のチャネルから持ってきているのか…など、有機的に動くトラフィックを理解することがこれまで以上に重要になるでしょう。
考え抜かれたクリエイティブが重要性を増す時代に
マーケティング担当者は、創造力を使ってこそオーディエンスとつながることができると常に理解しています。Appleのプライバシーの変更が間もなく全面的に実施されると、2021年のモバイルマーケティングでは広告クリエイティブが最も重要にな存在になるでしょう。ご存知のとおり、Apple独自のIDFAは、ユーザーがオプトアウトせず、広告を追跡するためにオプトインする必要があるものに変わります。そしてこの変更は、大きな影響を与えることなります。ユーザーを特定する機能がなければ、広告主はキャンペーンのパフォーマンスを適切にターゲティングし、最適化し、属性判定するのが困難になり、広告効果が損なわれることになるからです。
その結果、広告主や広告技術プロバイダーは、プロバブリスティックアトリビューション(この記事で私の同僚Andre Tutundjianが触れています)や、コンテキストターゲティングなどを使う戦略にシフトするようになります。IDFA後の世界でモバイル広告に効果を出す最善の方法のひとつとして、広告クリエイティブをアプリから利用可能なコンテキストシグナルと効果的に組み合わせることがあります。広告のクリエイティブとそのプレースメントのコンテキストが一致すると、消費者の感情に訴求する広告になる可能性が高くなるのです。
感情は、消費者の意思決定と購買行動に最も強く働きかける力のひとつです。広告を見る前にユーザーがどのようなコンテンツに関わっていたかに応じて、消費者をブランドに惹きつけ、ロイヤリティを確立し、クリックスルー率やコンバージョン率などのパフォーマンス指標を改善しているアプリ内広告の広告主は、ユーザーの感情を呼び起こすクリエイティブをデザインすることができています。
広告インプレッションはアプリ入札が主流に
2021年、ついにアプリ入札の成長が加速し、パブリッシャーが広告を通じてアプリを効率的に収益化するデファクトスタンダードのソリューションとなりました。従来のSDKベースのアドネットワークがリアルタイム入札に変わってきたこと、業界トップのメディエーションプラットフォームが入札ソリューションを全てのパブリッシャーに解放したことで、統一化されたオークションの競争はさらに激化しました。言うまでもなく、プログラマティックDSPはアプリ入札を通じてすべての在庫にアクセスしています。
この「ゲーム」を生き抜くために、SDKベースのアドネットワークは、パブリッシャーにSDKを統合させるために、もはや特別で独自のクリエイティブやレンダリングエンジンに頼ることはできなくなりました。アドネットワーク各社は今後存続していくために強固な入札アルゴリズムを必要とします。これにより、アドテック企業の統合傾向はさらに加速されるでしょう。2021年には、このエコシステムで競争力を維持したいDSPや、これまでのモバイル広告ネットワークが買収や合併を行うケースが増えると予測しています。新しいアドネットワークやDSPからの入札数が増えると、アプリ入札が運用上の非効率性を改善され、収益とARPDAUの向上にもつながるということが、パブリッシャーに理解される一年になるでしょう。